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日本フェイシャルオーソトロピクス研究会

「よくわかるOrthotropics」シリーズ 第1回目

オーソトロピクスは、「オーラルポスチャーに誘導されて顎顔面と歯列が良好な発育を示していく」、という仮説を前提に構築された治療概念と臨床実践論です。仮説とはいえ、矯正歯科臨床のご経験が豊富な方々には、この生物学的仮説の正しさはよくご理解していただけると思います。
顔面・歯列の形態および機能の由来には、遺伝要素もさることながら、環境因子(呼吸・嚥下・咀嚼・全身の姿勢等)も無視することはできません。そして、それら多様な環境因子は大なり小なり「オーラルポスチャー」へ影響をおよぼします。そのことは、今日の日本の子ども達の顔貌や歯列の急激な変化を見ても明らかでありましょう。

「よくわかるOrthotropics」シリーズを通じて、オーソトロピクスを深く学ばれるためには、ジョン・ミュー氏の講演会へのご参加、あるいは彼が1986 年にその体系を著した『BIOBLOC』の和訳本『バイオブロック・セラピー』を適宜照らしてご覧になることをお勧めいたします。さらには、この治療法に関して多くの治療経験を積んだ会員がおりますので、皆様の研究会へのご参加も、お待ち申し上げる次第です。

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「よくわかるOrthotropics」シリーズ 第2回目

小児歯科専門医である知人が体調を崩した折に話していたことです……「バイオブロック「Biobloc Stage Ⅲ 」も原因のひとつかなア?」。もちろんこれは彼一流の冗談です。

が、それほどにオーソトロピクスにおける、年齢・フェイシャルタイプ・歯牙サイズ、将又(はたまた)耳鼻科形疾患を含めた適用症例の選択は難しく、さらにはオーラルポスチャーの大切さを認識することは容易ではありません。

たとえば、上顎(正確には頬骨・篩骨・口蓋骨・鋤骨・涙骨とで構成される上顎複合体)の側方拡大を「Biobloc StageⅠ(上顎用)」という装置で達成するのはオーラルポスチャー是正の、いわば準備段階です。ところが因果を混同して、「歯牙配列を目的とするのがBiobloc StageⅠ装置だ」、などと他の類似装置とおなじように解釈し、またはその意識に引き摺られていると、従来的矯正歯科治療ではなかなか改善効果の認められない「垂直的な不正咬合」の改善はもとより、非抜歯治療と見誤って所期の目的を納めることが出来なくなります。

実際、診療をしてみればわかるのですが、「Biobloc StageⅠ」で得ることのできた成果を維持するには、多くの場合、「Biobloc Stage Ⅲ」を子ども達がよく使ってくれなくてはなりません。「Biobloc Stage Ⅲ」の目的はオーラルポスチャーの習得と習熟であって、下顎を位置づける装置でもなければ直接的に歯を動かす装置でもありません。

シリーズ第2回目は、お困りの患者さんがいるからといって、「オーソトロピクスの全貌をつかむまでは治療に着手しない、あるいは比較的しっかりとした筋肉タイプ(Mesio~brachy facial type)で下顎はわずかな後退をしめす、叢生の少ない8歳以下症例への対応からはじめるのが望ましい」ということをテーマにお話しいたしました。

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「よくわかるOrthotropics」シリーズ 第3回目

オーソトロピクス治療の開始時期は、成長の阻害因子の排除を含めて早いことが望まれます。
そこで今回は「用語」の整理。
ここのところがゴチャゴチャしていると、オーソトロピクスの成果がおぼつかなくなるおそれがあります。矯正歯科治療に限ったことではありませんが、「Semantics(意味論)」が説かれるには説かれるなりの深いワケがあります。

明別しておきたい「矯正歯科処置の種類」と、そして「オーラルポスチャー」の実質内容を挙げましょう。

【矯正歯科処置の種類】
●【Orthodontics(オーソドンティクス)】
歯牙の移動処置(装置はマルチブラケットを主体とする)
●【Orthopaedics(オーソペディックス)】
顎骨の移動処置(上顎複合体への対応のほか、各種の機能的矯正装置による下顎の成長誘導も含んで言うこともある)
●【Orthotropics(オーソトロピクス)】
顔面の成長の是正、あるいは本来的成長に向けた誘導処置。

【オーラルポスチャーの正しい理解】
●【Orthotropics(オーラルポスチャー)】
正常(生理的)な顎顔面の成長が発揮される条件のことで、
「舌が口蓋に収まり、口唇はかるく閉じる。そして上下歯牙はきわめて近接する(水平成長の発現を期待するのであれば、日中はかるく触れる)状態の維持」。
※ 軟組織の普段のバランスがおよぼす『時間効果』は、短時間に強い力が働く場合よりも絶大! 「オーラル」における「ポスチャー」の大切さ、です。

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「よくわかるOrthotropics」シリーズ 第4回目

今日は「オーソトロピクス(自然成長誘導法)の特色」です。
矯正歯科の歴史的な変遷に照らすと、一目瞭然です。

●1930年代、「上顎の位置は安定しているから変えるべきではない」という、キチキチの考えに多くの矯正歯科医は染まっていました(上顎複合体を構成する骨の形状特性から見てもこれは誤認です)。
●やがて、上の奥歯にバンドという装置をかけて、それを足がかりに首や頭のうしろへネットやストラップ状の装置で引っ張ると、上あごが引かれた方向へ動くことがわかって、徐々に使われるようになりました(上顎後方牽引装置)。しかし出っ歯の患者さんが多い欧州米国では、どうしても「上あご(上の前歯)を下げる」、といった発想に片よりがちとなり、もともと下がっている下あごにあわせようと一生懸命でした。しかし、多くの場合、装置の力系の反作用で下あごもさらに後ろ、かつ下へ落下してしまいました。
●その反省として、下あごも前に、動かすことが出来るのでは? という発想が生まれました。いわゆる機能的矯正装置の登場です。残念ながら、解剖学的な基礎知識不足、下顎の持つ役割のちがい、あるいは個々の患者さんのMuscle tone の違い、口を開けざるを得ない耳鼻科系の病気の関与等々に由来して、効果は不十分、もしくは反作用でさらに下あごも上あごもあらぬ方向へと成長する事例が多々起こりました。もちろん、オーラルポスチャーの重要性に対する認識は、有能な臨床医の一部を除けば、まだそれほど浸透していなかった時代です。
●マルチブラケット(いわゆる針金)全盛期の到来です。面倒は飛ばして、患者さんの主訴である「歯」を見る時代に入りました。そんな時代のうねりに在っても、正常な顔の成長を妨げない、優れた治療法もあるにはあったのですが、「顔を台無しにしてしまう危険の大きい治療」が簡便さゆえに主流となりました。端的には、「歯」の並びを「顔」より優先し、思わしくない結果を来せば手術で骨を動かす・・・そんな時代です。

わかりやすく治療開始年齢10歳(左列)と8歳(右列)の、ともにアングル分類Ⅱ級1類における治療結果の差を示してみました。10歳の女の子の方はマルチブラケットを主体とした治療(オーラルポスチャーの改善は認められず)、8歳の女の子はバイオブロックによる治療(良好なオーラルポスチャーの獲得)です。細心の注意を払っていても、オーラルポスチャーが改善しないと治療後に数年経てば、このような結果を生じることもあり得る、とお考え下さい。
なお、自然成長誘導法における生理的な変化を狙うことの出来る年齢は、一般には、5〜8歳であることを、強調しておきましょう。

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「よくわかるOrthotropics」シリーズ 第5回目

今回は『自然成長誘導法』をご説明しましょう。

『自然成長誘導法』……Web上で一人歩きをはじめている言葉です(笑)。
非抜歯治療(歯を抜かずに並べる方法)・床矯正(上あごにBiobloc StageⅠ様の装置を使う)・医院広告等々……の分野で、しばしばあやまって引用されています。
ある種、魅力的な響きがあるせいかも知れません。「自然」なるものの姿を知ることは。医療では身が引き締まるほどに厳しい課題なのです。

当研究会にて “Natural growth guidance”(ジョン・ミュー氏提唱)の和訳に、用語『自然成長誘導法』を当てた経緯について、説明をすすめます。

いくつかの矯正歯科臨床では、現状がその患者さん(=個体)にとって「生理か?非生理か?」あるいは予後(治療後の推移)を含めて「どうしてそうなったのか?」の大切な判断よりも、創始者が提唱した123‥‥式の術式や理想の値やらが信奉されているきらいがありました。
患者さんは個人個人で性格が違うように、顔立ちと歯列も個性に満ちています。生体には適用に対する許容範囲がある‥‥とはいえ、あべこべに思いついた理想にあてはめてしまうと、どんなことが起こるでしょう?
……ご想像にお任せします。

つまり、患者さんの生活環境・幼少期からの履歴・遺伝要素等々を加味して、バランスのよい本来の状態へ誘導する方が、「治す処置」よりも現実的で、無理のない状態に落ち着くと考えられるのです。‥‥「従来の観方に見落としがなかったとは言い切れないようなので、オーラルポスチャーの重要性へ、ひとつ着目されては如何なものでしょうか?」‥‥あくまでも謙虚に、矯正歯科臨床の歴史に一歩を積み重ねる意味を込めた言葉であると、ご理解下さい。

実は昨今、多くの医療分野でもこの種の問題への反省がようやく喚起されて来ており、ことに慢性病への対応は、疾病形成因子の排除(生活習慣の改善)を投薬や手術よりも、第一義に据える気運が高まっています。

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「よくわかるOrthotropics」シリーズ 第6回目

「患者さんの生活環境・幼少期からの履歴・遺伝要素等々を加味して、バランスのよい本来の状態へ誘導する方が」‥‥と前回述べました。はたしてほんとうなのかどうか? 10年以上におよぶ推移を観察した、バイオブロック治験例を今回はご覧いただきましょう。

●主訴「あごが小さく歯が生えだした時点から重なって心配」という、6歳の女の子。「本人に負担の少ない方法で取り組んでもらえたら‥‥」と、お母様の心情あふれる添え書きもありました。
お姉さんは反対咬合の治療中で、顔と歯列については明らかに異なる遺伝形質を受け継いでいるようです。

ここからは、専門的な書き方ですみませんが‥‥
●【概要】
筋肉系はDolicho type、気道の問題は少ないのですが、すでに開口癖が強く、口唇閉鎖時にオトガイ筋が過剰に緊張、嚥下のときには頬筋・口輪筋が強力に作動します。花粉症による季節的な鼻閉も有り。
多くの経験を積まれた専門医でいらっしゃるなら、容易な処置では済まされない症例であることはご十分に察せられるでしょう。

●【治療の見通し】
① 自然成長誘導法をおこなっても、仕上げ治療(マルチブラケットによる歯牙配列処置)のときは50%ぐらいの可能性で小臼歯抜歯が必要になる
② それを回避するには垂直方向の成長(あくまでも直感的には、形質遺伝として潜在的にはあると想われる)を、水平方向に変換するよりなかろう
③ そのためにはオーラルポスチャーの是正が不可欠である

●【治療の経過】
8歳に治療を開始。すぐにはじめても良かったのですが遅れた理由は忘れました(全くだめです……笑)。オーソトロピクス(自然成長誘導法)は、難易度からするとやや厳しい状況ですが間に合います。

① 上顎と下顎歯列にBiobloc StageⅠを5ヶ月使用、ただちにオーラルポスチャーの是正を目的とするBiobloc Stage Ⅲを装着、ひと月以内に一日に22時間以上の使用が可能なるほどがんばってくれました(ここが治療の最大のポイント!!)。
② 12歳の誕生日までこの装置を気長に使ってもらいましたが、昼間はご本人の自覚で口唇閉鎖と口蓋へ舌をおさめる状態(「オーラルポスチャー」)が維持できるまでに改善したので、途中から夜間のみの装着に変更。
④ 依然、歯はガタガタしているのでR. M. RickettsのUtility arch を中心に7ヶ月間マルチブラケットを用いて歯列も整えました(通常のメカニクスでは顔の成長バランスが一気に崩れるので、きわめて、要注意です!!)。
⑤ ワイヤー保定については、はじめの4年は上下前歯の舌側へ、あとは下顎のみ(4切歯へは現在も接着中)。

●【要約】 写真をよくよくご覧になると、従来の治療では達成できなかった顔貌の変化や「しっくり」とした歯列にお気づきになるでしょう、と同時に、ほんとうの「非抜歯治療」の厳しい現実も “感触” なさっていただければ幸いです。

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「よくわかるOrthotropics」シリーズ 第7回目

今回は、オーラルポスチャーの是正に用いるBiobloc Stage Ⅲ( バイオブロック3 型装置) をご紹介いたしましょう。
ジョン・ミュー氏によって開発されたこの装置は、いくつかの段階的な治療で、上顎複合体や上下歯列を整えたあと、オーラルポスチャーを安定させる目的で使う、いわばオーソトロピクス( 自然成長誘導法) の核心です。
※ 次回研究会例会で調整のdemonstration を行いますので、ご参加下さい。

●目的: くどいようですが「オーラルポスチャーの是正( 生理化)」。
臨床では、おおむねの方向性の正しさは、とても大事。最先端の科学技術を駆使した“高度”医療であっても、治療の方向性( はじめの一歩) が誤っていれば成果は思わしくないことでしょう。
※ Mandibular posturing appliance ではありません。

●効果:「顔( 顔面頭蓋) の本来的な成長の回復および発揮」。
形質遺伝をこえた変化は、もちろん期待できません。しかし、個々人でおおいに異なるとはいえ、成長のポテンシャルが残っている場合は、「場をととのえる治療」の方が、長い目でみて結果がすぐれます。

●適用年齢:「5~ 8 歳が効果的」。
これについては、杓子定規で測るような年齢区分はなく、すべてが臨床者の個別判断となります。鼻づまりや受験勉強による不良姿勢を契機に、ふたたびオーラルポスチャーが乱れる兆候が認められた場合、他の装置で上顎の形状を回復してから歯型をとって新調する事なども、臨床の現場ではあり得るでしょう。
※ 開口癖が出てきた高校生に再度適用する例などがありますが、一般論としてはさし控えておきます。

●使用時間:「日中の装着( 使用)に徐々に慣れて、それから夜間の就寝時もつける。一日に22 時間( フルタイム) 程度をつけたまま過ごす。顔の形態やオーラルポスチャーの改善効果があらわれたら、夜間のみの装着( 使用) へ」。
体の細胞の置換期間は、1 サイクルでおよそ2.5 年。さらに、人間の無意識の行動は幼少期からの履歴の集積ですから、そう簡単には改まりません。気長に使うのがポイントです。

●子ども、ご家族、歯医者さんの共同作業!
スンナリと装置に慣れてしまう子どももいれば、なかなか… … の場合もあります。でも「子ども達は個々の歯並びよりも、顔立ちの良さ」にこそ関心があること大人に変わりありません。お母様と歯医者さんの励ましは大切です。

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「よくわかるOrthotropics」シリーズ 第8回目

オーソトロピクス(自然成長誘導法)における一連の治療システムは、【オーラルポスチャーに誘導されて、顎顔面と歯列が良好な発育を示す】という仮説 から、おのずと導かれたものです。
したがって、臨床のアプローチは論理的に、かつスッキリ構成されています。
複雑事象を簡素化することによって、慎重な臨床対応が可能になる、ということは重要です。なぜなら人は、大切な局面で、一点に向けた精細な制御しか出来ないからです。
ところで、不正咬合の原因を語るとき、いささか注意しなくてはならない言葉が『原因』でしょう。
欧州・米国における『原因』は、一つ前に起きた事象の中で、研究者や臨床家がとくに着目した内容のこと。
一方、我が国における『原因』は、これとは趣が違って、複雑に絡まった経過(履歴)を含めて、時間の流れとして眺めてゆくところに特徴があります。
その辺(あたを)りの微妙な事情を汲んだ上で、オーソトロピクスにおける『原因』をとらえていただきたいと思います。

●不正咬合の原因は、彼の見解によれば、「下(口蓋)からの舌の支持や歯牙の接触(時間効果)が欠落もしくは不足することによって上顎が崩壊、その二次三次の適応変化として下顎が変形する」とのことです。口蓋裂等の例外はあります。先述の欧州米国における『原因』の解釈に照らせばマトを得ています。

●長顔化、歯列の狭窄化、生理的な口唇閉鎖の不全(破綻)、下顎枝の短縮とアンチゴニアルノッチ(抗下顎角)の形成、視覚領域の保全から首を代償的に弯曲変化させる……といったからだの反応を伴うでしょう。
すると皆様は、このような疑問を抱かれるのではないでしょうか?
……「歯の大きさは?」

●実際、日本における矯正歯科臨床の場面では、明らかに歯のサイズが大きいということがあります。これについては別の機会に現実的な対応について述べることにしますが、ジョン・ミュー氏の診療所に来院する患者のほとんどは、診療所を見学した方々はお気づきの通り、我が国におけるような歯牙サイズの問題は少ないように見受けられます。仮に、そのような患者が訪れた場合、他院における異なる治療法を勧めるからでもあります。

●つまり、民族的な差異に加えて、扁桃肥大、慢性的な鼻閉、乳幼児期における軟食による筋肉の活動レベルの低下、無視することのできない形質遺伝の影響を慎重にふまえた上で、日本の臨床者は(も)、きめ細やかな、個別の状況判断をしなければなりません。

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「よくわかるOrthotropics」シリーズ 第9回目

今日は【臨床の実感】の大切さ、です。オーソトロピクス(自然成長誘導法)は、とくに肉眼的観察によって、成長の推移をとらえることが重要です。

親知らずを含むすべての歯がきちんと並び、顔もしっかり力強く育っている人を見ることは、きわめて稀です。つまり、大なり小なり「異常なバランス状態」にある人を、自分を含めて私たちは日頃、目にしているわけでしょう。そのような中で、とくに歯のねじれや重なり、しゃべり方や顔貌が、ある範囲から逸脱すると「何かおかしいのでは?」と感じるわけです。

古代人にとって「歯牙」は、生存にとって必要なものであって、それが存分に機能できないことは個体にとっては不利な条件でした。
ところが今は親知らず等々の歯が生えなくても、また八重歯になっていようとも、それが原因で命を落とすことなどありません。これらは、遡ると「正しいオーラルポスチャー」、「生理的な鼻呼吸」、「安定した嚥下」、「強力な咀嚼」……といった機能的要求の不足がベースとなって生じます。もちろん、さまざまな環境因子が関わり合うことも見逃してはなりません。
前者は『廃用萎縮原理』といわれ、俚諺にも『宝のもちぐされ(use it or lose it )』とある通りです。

●歯の並びはもとよりのこと、顔貌についても臨床者は十分な注意を払わなければなりません。もちろん、「見た目」というのは個人における美しさ——他人による評価(=審美性)とは種質の異なるものです。
●ジョン・ミュー氏はケニアに滞在中、人々の顔貌をよく観察した上で、顎骨と歯牙の調和性に関する調査を行い、帰国後イギリスの不正咬合の実状を「実感」したといいます。このような、経験の総和で感触された「実感」というのは、じつは臨床者にとって大切なものです。
「上顎下顎ともに(下方ではなく)前方へと成長する場合、顔貌がより自然となる」という報告も度々なされています(1970 Peek , 1983 Platou ・Zachrisson)。 ●上顎複合体(中顔面部)が下方からの舌による支持を失い落下するがごとく成長し、下顎もそれに適応してMandibular plane angle が増大、Anti-gonial notch が深まり、下顎枝が短縮する(short ramus)ような顔貌をもった人は、昨今、日本だけでなくヨーロッパにおいてもしばしば見受けられます。
顔の垂直化に伴って前頭部(額)は顔面頭蓋に対して後方へ伸展しますが、これは暦年的には鷲鼻・あるいは二重顎として観察されることがしばしばです。

※ スライド左は、1907年のアングルより引いた写真。「アメリカインディアンの顔貌からは、歯並びの良さは容易に想像できよう」との添え書きがあります。右はオーラルポスチャーの問題を持つ人の典型的な顔貌と骨格所見、すなわち長期にわたる経時的変化を示しています(日本人成人女性)。

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「よくわかるOrthotropics」シリーズ 第10回目

【 用語で生まれる意識のズレ 】
どの診療科にも、専門医ばかりでなく一般の方々の感覚にとっても「??」 と感じられる用語が残っています。根が張ってなかなか抜けない雑草のようなもの。

たとえば「本態性●●症」。
「原因不明で判らぬ●●症」に置き換えてみるとシックリします。

ところで、『オーラルポスチャー』がわかるほどに違和感が強まる慣用語が、矯正歯科治療の世界にもたくさんあります。そのなかの一つ、「上下顎前突」を今回は採り上げました。
というのも、これを踏まえておくと、なにかと「オーソトロピクス(自然成長誘導法)」の理解に便宜だからです。

具体的にお話ししましょう。
猫背でポカンと開いた状態が続くと、小学校に入る頃には、口元からは相対的に前歯が突出していきます。日本の子ども達にちょくちょく見かける光景ですが、矯正歯科では『上下顎前突症』とよびます。 ところが実際は、顔面を吊す前頭蓋の基底に対しては、相対的に後退して行く。つまり、後ろ(+下方)へさがった上下の顎を「前突」していますよ、と言うのは考え物です。

こんな些細な慣用語でも、意識がひきずられると見落とすことが多々あります。
● 表面上は前後(水平面)の現象であっても、実際は高さ(垂直面)の問題がベース
● 歯列と骨格の構造の問題をごちゃ混ぜに考える恐れあり
● 何でそうなるのか? の原因(オーラルポスチャーや生活上の問題、耳鼻科系疾患の関与)を忘却しがち → ※ 症状取りに奔走すれば結果は思わしくないでしょう。
● しばしば臨床者が陥りやすい思い込みとして、高さ(垂直面)の問題を歯列の幅を拡げて解決を試みる → ※ 「幅を拡げて場所をつく」って済むような生やさしいことはありません。少なからぬ場合、所期の成果はおろか問題を複雑化させます。

1997年にはジョン・ミュー氏の同僚であるDibbets がTrotmanとMacNanara の協力を得て、次のような報告をしました。
「上顎の後下方への回転や、ゴニュアルアングルの増大に関連した開口癖があればあるほど、切歯は後方へ傾斜し上顎大臼歯は過剰に萠出、上下前歯も過剰に伸び出て前顔面高は増大する」、と。

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「よくわかるOrthotropics」シリーズ 第11回目

今日は、と申しますより今日も、「ポスチャー」‥‥それほどまでに、これは大切なのです。

海外の矯正歯科医のあいだでは、昔、このような議論が盛んでした。
「不正咬合の原因は遺伝だ!」いや「環境が原因だ!」‥‥これは学閥が論陣を張るとき採用される手法で、臨床からは遊離しています。截然と定義することすら無意味なスローガンを持ち出したのには、持ち出すなりの理由がありました‥‥それは「感情」(笑)。
でも、冷静かつ穏やかに眺めてみると、この種の論争も臨床の便宜になるので興味をそそられます。

Orthotropicsでは次のように考えます‥‥
【引き金となるのは環境因子、多様に表出する顎顔面の特徴は遺伝因子(とくにpostureおよび動きのパターンで、とくに舌)】
(The cause of malocclusion is environmental, but a characteristics of malocclusion are due to muscle pattern inherited (genetics).)

これはハーボルト氏の有名なサルの実験(人工的に鼻孔を閉鎖)などで明らかです(Harvolt, E. P., Chierici, G. , Vargervik, K. “Experiments on the Development of Dental Malocclusions” 1972)。
人(ヒト科動物)では、インド人はわずかな開咬をもつⅡ級不正咬合、比較的骨格のしっかりとした日本人では口蓋扁桃の腫れがある場合にⅢ級不正咬合になりやすいことが知られています。

さらに、百尺竿頭進一歩させたのが、『オーラルポスチャー』の概念です。
【口唇はかるく触れる、上下の歯は極めて引接した状態に近づき、舌は口蓋(上の歯列の内側)に収まっている】‥‥この各部分の相対的位置の維持が、顔と歯列の健全な発育にとって、とっても有利にはたらく、と言うわけです。

※ 歯医者さんにもいろいろな治療学派があり、噛み合わせで肩の高さや頭の傾きを変える試みもある様子ですが、そちらの「全身姿勢」と『オーラルポスチャー』は無関係。自然成長誘導法(Orthotropics)は、顔と歯列の本来的な成長をひたすら引き出す方向への誘導処置であり、その発現を妨げている因子の排除にも主眼を置いています。

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「よくわかるOrthotropics」シリーズ 第12回目

【上顎Biobloc StageⅠ】
さて、今日からは2回ほど、上顎用Biobloc StageⅠ装置の取り扱いをご説明しましょう。

まずは基本から。
「上アゴ」は、写真のとおり左右ひと組の骨によってつくられるのではなく、役割の異なる幾種類かが集まって構成されます。噛む力を伝える部分はしっかりとしていますが、それ以外は板状となって、軽いながらも引っ張り応力によく耐えます。

口のほかにも、鼻腔(びくう)、鼻咽腔、眼窩(がんか)をかたちづくり、軽くてしなやかな構造上のゆえに顎整形学的アプローチが可能となります。歯列だけに効果が及ぶわけではない、という事実は、それだけ包括的かつ慎重な対応が歯医者さんには要求されることを物語っています。

このような、表情を醸し出す顔の中央そのものへの対応‥‥それが上顎Biobloc StageⅠのターゲットです。その目的とするところは、次の段階の装置、Biobloc Stage Ⅲで行うオーラルポスチャー改善の準備を整えること。

臨床者が解剖構造を熟知していないと、「歯を並べるためにアゴを拡げる装置」くらいの勘違いをしてしまうかも知れません。『装置探し』からOrthotropics に興味を抱いた歯医者さんが陥りやすい、一番の問題でしょう。
「歯を並べる隙間の確保」‥‥既にここには因果の混同(非抜歯治療はあくまで結果として達成されることがあるに過ぎないこと)と、目的の取り違え(歯を並べる装置ではなく、顔の成長を引き出すのが狙い)があります。

また基本的な事実関係、たとえば上アゴと頬の骨との強固なくっつき具合(縫合)の存在を見落としていると、各縫合部をBiobloc StageⅠの効果で緩めたあとに時として行う上顎前方牽引処置に際して、頬(頬骨上顎縫合の近辺)に維持を求めて中顔面を前へ引っ張るような努力を患者さんに強いることも起き得ます。ちょうど、マンホールの上に立ってマンホールの蓋を引き上げるようなもの。

ということで、上顎複合体の骨の解剖を写真で見てみましょう。耳鼻科系の理解の一助として、副鼻腔の開口部を最後のスライドに示しておきました。

次回は、研究会でしばしば話題になる、上顎複合体の『側方拡大』の方法と量、関連する治療の流れについて、お話しいたしましょう。

※ 「オーラルポスチャー」を治療に掲げる臨床医の集まりがWebサイトに見受けられるようですが、本研究会とは関係ありません。

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「よくわかるOrthotropics」シリーズ 第13回目

【上顎Biobloc StageⅠ 】
今回はちょっと長め… … Biobloc Stage1( バイオブロック ステージ1 型)の深い内容をギュッと圧縮しました。

【写真1 , 2 】
Biobloc Stage 1 の取り扱い方のまえに、まずは類似の「ネジ式歯並び装置」を2 年間使った患者さんの一例をみてみましょう。治療の目的も目標もオーソトロピクス( 顎顔面の成長発育の誘導処置)とはちがう、一般的なものです。

拡大ネジを作動させる速さ( 上顎骨と口蓋骨の間の骨のつなぎ目を拡げる速さ)は、学派によって意見がまちまち。もちろん杓子定規ではかったように子ども達のアゴが反応するわけではありません。ネジ式装置の歴史は1875 年に遡ります。ですから、拡大速度に関する論文は山のようにあります。
このお子さんの場合、速さはとてもゆっくり( 緩徐)。2 年間で5mm 程度といったところ。夜間のみの装着なので、致し方ありません。

P-A Cephalogram( 写真1 ) では、上顎歯列とは表裏の関係にある鼻腔は狭いまま。正中口蓋縫合も拡がった形跡はみられません。つまりこの矯正歯科装置の成果は、奥歯を横へ傾けた、歯槽部に限局した変化でした。
残念ながら、上顎洞炎( 黄色で囲んだところ) も疑われます。

仮に鼻腔が狭いとして、それがオーソトロピクスペディック( 顎整形的)な矯正歯科装置によって旺盛に拡がると、ひどい鼻炎や扁桃肥大が伏在しないかぎり、多くの小児で鼻呼吸が楽になることが知られています。すべての小児症例に当てはまるわけではありませんが、ときおり慢性的な副鼻腔炎の改善がみられることがあります( これについては患者さんの生活からはじまり複雑な生体反応が関係するので、学会でも意見が分かれますが… … )。

また、上の前歯は内側に傾いています( 写真2 )。
装置の拡がりと調和する形で表側のワイヤー( 唇側線)を歯から離すように毎回調整( 写真5 )すればこのようなことは起こらないのですが、乳歯の奥歯にはめる装置維持の機構( クラスプ、写真4 )がしっかりしていないと、装置を飲み込んでしまう恐れがあるため、術者の気持ちとしてついつい唇側線を歯に触れさせがち… … すると歯列が横に拡がるにつれて前歯は内側に押しやられます。断層写真で見ると犬歯の生えるべき隙間が確保されてはいません。青が犬歯の幅、赤が現状です。

【写真3 , 4 , 5 】
オーソトロピクス(Orthotropics=自然成長誘導法)における変化を診てみましょう( 写真3 )。7 歳5 ヶ月の男の子です。

写真3 の左は治療前、中央はBiobloc Stage1 で上顎複合体全体を横へ拡げて各縫合部を緩めている途中です( 歯が並ぶ場所が確保されてくるのは あくまでも一連の変化の「結果」である点に注目! ! )。右はオーラルポスチャーの保全を目的として、ネジのないスッキリしたデザインのBiobloc Stage 2 へ移ったところ。

セミラピッド拡大( Semi-rapid expansion) と付されているのは、1 週間ごとにおよそ1 mm 正中口蓋縫合を拡げる「速さ」の意味です。 もちろん前回、上顎複合体の解剖図で示しましたとおり、頬骨と上顎骨本体の縫合を除けば、中顔面の領域全体に変化が及んでいます。術者は歯にばかり気持ちを奪われてはいけません。

装置を外すのは、就寝前の歯を磨くときの5 分間だけ。
すると皆様はこう思うかも知れません… …「ああ、子どもがかわいそう」。
ところがBiobloc Stage1 の適用が可能な8 歳ぐらいまでの子ども達は、驚くほどに適応能力が高いものです。
「再びつけたときの違和感はイヤ! 」と、5 分間でも装置を外すのを嫌がる子どももいるくらいです。もちろん食事中もつけたまま。歯列に対して装置がピッタリと安定するのは、実は把持部に様々な工夫が凝らされているからです( 写真4 )。
どの技工所に装置を作ってもらうか? あるいはクリブクラスプ、レスト、唇側線、カテナリーワイヤー等々の調整については、見よう見まねで行うのはあまりにもアヤうい( 顎顔面が良好な成長発育を発揮する機会を提供できないでおわる恐れ、といった方が適切でしょう)。
♡ 研究会例会へお足を運んで下さいね( 笑)。

写真5 は、唇側線とカテナリーワイヤーです。オーソトロピクスの創始者John Mew 先生は、前歯を上前方に圧下( 伸び出た歯を骨に戻す)させることを推奨していますが、( 1 )もともと前歯が飛び出て、( 2 )歯列の奥行きがなく、( 3 ) 頭の形も横に拡がる日本人、とりわけ( 4 ) 鼻が悪く唇が開き加減、( 5 ) 足腰がしっかりしていない子ども達では、転倒の拍子に歯を折りかねません。このように、もともと「閉唇・舌の挙上・鼻呼吸」といった条件が整いにくい場合や、明らかに小臼歯抜歯を必要とする症例においては、術者は個別判断を慎重に検討しなければならないでしょう… … さらなる慎重を期して。

【写真6 】
正中口蓋縫合の側方拡大が順当になされているかどうかは、仔細に口の中を診ればわかります。バイオブロック装置では装置の構造上、口蓋粘膜が多少荒れてしまって観察しにくいかも知れません。
写真はQuad Helix という別のタイプで同様の処置を行ってる5 歳の女の子。白い帯状の線が、縦に2 本走り、中央がやや凹んでいるのがわかります。くぼみの粘膜の下で、骨が新生しています。
肉眼観察は基本中の基本ですが、専門医の方は、写真1 で示したP-ACephalogram を撮影なさると、鼻腔に対する効果の他にもいろいろな変化にお気づきになる事でしょう。
※ 「オーソトロピクス」とそれにまつわる認定医制度を標榜するWeb サイトが見受けられますが、本研究会とは関係ありません。

日本フェイシャルオーソトロピクス研究会

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「よくわかるOrthotropics」シリーズ 第14回目

今日のテーマ:「上アゴの可変性とCatch up growth」!!

【上顎複合体の柔らかさ】

ヒトの骨で、剛性密度がもっとも高いのは、側頭骨錐体部と下アゴでしょう。おなじ歯を並べる器であっても、上アゴ(たくさんの骨から構成されるので上顎複合体)は柔らかです。……ということは、普段の生活の中でオーラルポスチャーがちゃんと維持されているかどうか? 食べ物をよく噛むかどうか? 口を閉じて鼻で息をするかどうか? で形が変わりやすいわけでもあります。

ですから、個人個人の特性に留意して、矯正歯科装置を適切に選択し、適切に使えば、小学校の中学年前までは、形や成長方向をある程度、変更できる可能性があると言えましょう。

【反対咬合を例に……】
10歳女子。スライド1をご覧下さい。

子どもの歯(乳歯)の根が、かなり吸収しています。治療に利用できるのは下の奥の乳歯2本だけ。状況から判断して、上顎Biobloc StageⅠは使えません。
治療の方向性としては、バイオブロック1型や2型とは別の装置を活用して、
(1)上アゴの前への発育を促す
(2)伸び出てしまった下の前歯を骨にもどす(将来の魅力的な笑顔に、とっても貢献!)
の2点をはじめに実現させ、
そのあと、Biobloc Stage Ⅳ(この場合はバイオブロック 4型)をつかい、オーラルポスチャーの改善へ進むのが、もっとも自然なアプローチであると考えられました。

【どうなったでしょう?】
スライド2とスライド3をご覧下さい。

顎顔面口腔、かいつまんで言えば「歯並びと顔、それに飲み込み方やしゃべり方」は、のびやかに発育していきました。
上アゴの成長を、側貌セファログラム上で代表するのは Point A(A点)だけです。ここは前頭蓋から吊られる場所なので、上アゴの前後の位置変化は、T1とT2のトレースを、Ba-Na(頭蓋基底)at Naに重ねれば客観的に評価できます。
この子の場合、前頭蓋の前への成長はほぼ終了していますから、治療によって3.6 mm 前へ成長が発揮されたことになります。鼻尖部ではさらに旺盛な成長も確認されました。

たった1年3ヶ月でPoint Aが『3.6 mm』前へ……すさまじい変化。

この変化の背景には、三つの事柄が考えられます。
(1)Reverse H/G(リバースヘッドギアー=上顎骨前方牽引装置)の成果
(2)前歯の逆噛み改善から生じた「解放現象=Unlock」
(3)オーラルポスチャーの改善を基盤に「Catch up Growth」と呼ばれる、今まで眠っていた成長のポテンシャルが一気に発現する現象

実際は(2)と(3)は混和するので明別は不能。両者は物理学用語の「ポテンシャル」に集約する変化です。
生体の場合、このような事象について人類は適切な計測手段を持ってはいないので科学的検証は今後とも期待しかねますが、臨床の現場では、「じっくり腰を据えて、『場』を整え、からだの反応を待ち、観察とモニターリングを行い、多くの治験実績を積む」といった地道な手順を踏めば、ご自身のシックリとした心証に加えて、患者さんやその家族からのよろこびの声を以て、きっとおわかりいただけるでしょう。

※ 「オーソトロピクス」、「バイオブロック」、それにまつわる認定医制度を標榜するWebサイトが見受けられますが、本研究会とは関係ありません。

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症例の発表形式について

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会員で発表をご希望なさる方は、こちらのpdf をご参照下さい!!
Pdf は、
(1)申込用紙
(2)ボードサンプル
(3)スライドサンプル
(4)診査表
です。
パワポ、Keynote‥‥等で、お好みのフォントや文字サイズを使い、要点を絞って、
見やすく、わかりやすく、製作します。


発表様式:ボード、ファイル、スライドにて行います。
初診時・経過(ポイントとなる時点)・現在の顔写真と口腔写真:必須
症例概要、発表要旨、基本診査、問題点の総括、治療計画、実際に適用されたメカニクスの流れ、治療経過要約、考察(さまざまな気づき):すべて必須
オルソパントモグラム、正貌セファログラム、側貌セファログラムのトレース・分析等々は、ご希望でファイルとスライドに添えて下さい。
上記分析法は各々の診療所で採用する方法。
スライドやファイルの資料の、背景色は問いません。
ファイルに入れる資料は、スライドと同じ(背景色は適宜変更して下さい)。
スライドの発表時間は、質疑応答を含め、10 分。
●発表形式の遵守を、宜しくお願いします。
なお、英文はミュー先生や海外参加者の便宜ですので、省略可。



John Mew講演会、2014年12月7日

Part1:John Mew講演会
東京ステーションコンファレンスにて、2014年12月7日に開催されました。
今回から少しずつ、オーソトロピクス講演内容を振り返ってみましょう。「オーソトロピクス」を構成するテクニックのごく一部が我流に解釈されて世界に広まったところで、あまり意味がありません。
昨年暮れ、John Mew先生とさまざまな意見を交わし、本筋をきちんと伝え残すにかぎると思われてきた次第です。「為にし」「名を借る」ひとはいつの時代にも絶えませんが、あまりにも寂しい生き様に思えます。
異なる意見に対して誠意をもって議論し、Professionalbaseでは一致が見られなくても、個々人の文化や価値観の特長を尊重し、また現行の矯正歯科の問題に鋭く切り込み、なによりも臨床の実績を積み、より豊かな人生をおおくの患者さんに歩んでもらいたいとの、85歳になった彼の為人(ひととなり)も、ささやかながらご紹介できれば幸いと思っています。

Part1は、本講演会における、オーソトロピクスの概要の紹介、観察の要点、骨格と歯列への力学的アプローチ、口腔諸筋群への対応、の4部から構成される、いわば導入部の解説です。

(1)General introduction
 (a) 形質人類学におけるヒトの顔の変化
 (b) とくにクロマニョンと比較して特徴的な現代人中顔面部の変化
 (c) 同下顎骨の変化、なぜ垂直成長が助長されるようになったのか(aetiology)
 (d) 正常咬合者における口腔の成長発育の様相(Oral postureとの関連に絡めた話)
 (e) 頭蓋の中における中顔面と下顎の成長
 (f) Oral postureの不全と口腔顔面成長の相関性を強く示唆する症例の閲覧
 (g) Orthotropicの作業仮説にまつわる他研究者の論文閲覧
 (h) 予後の予測

※一般に、漠然と日本語に「予後」と訳出されている“prognosis”は、内容の截然とした言葉です。
患者さんの家族歴と履歴性や病状の進行度を、術者の臨床経験や多数の臨床報告を踏まえて言うときの言葉で、自然の推移と人為介入を行ったときの、それぞれについての高度な判断です。オーソトロピクス臨床では、Oral postureを整えたときと、不全のまま放置した場合の、顔と歯列、筋機能の推移に関する予測を指します。


(2)Reading the face(観察箇所の勘所)
※“reading”は異常バランスの兆候をとらえるという意味があるので、白人小児人口におけるJohn Mew自身の診断法の基本を示したもの。
 (a) 前方の頭蓋基底を代表とする前額部からみた顔面の変化
※矯正歯科では、「頭蓋基底」の解釈に少なからぬ混乱が見られます。頭蓋基底を構成するのは、環椎と関節する後頭骨、医学生が頭蓋を学ぶときに一番苦労する蝶形骨(これがわからないと顔の成長理解はおぼつかない)、前頭骨、ときには聴覚平衡感覚に関わり顎関節の起点を提供する側頭骨もこれに含めます。前頭鼻骨縫合(Nasion)は、頭蓋基底の前方参照点です。前額部は、その直上にあって、顔の成長や老化の変化を知る上で、有用です。ただし、下垂体を包蔵するSellaは機能的には視床下部と密接に関わり、蝶形骨洞の上にあるとしても神経頭蓋に区分され、顔の成長とは無関係です。John Mew先生は講座のなかで「顔面成長の変更がセラ点の位置を変える可能性があるのではないか?」と述べていますが、むしろ人為処置の介入が不能な領域として、頭蓋基底の個体的特性、具体的には、Ba-CC,CC-Na,Polionlocation,Cranial deflectionに合わせて我々は不正咬合と顔貌を解釈し、治療計画を練り上げ、治療の前に予後を判断しなければなりません。
 (b)臨床上とても簡便なインディケーターラインの活用
※あくまでも、ひとつの参考とすべき基準値です。もともと面長の日本人では、この値は正常咬合者でも大きくなります。したがって、顔の骨格のバリエーション、発育に関する履歴性や遺伝特性、年齢変化を加味しなくてはなりません。そうしないとJohn Mew先生があれほど「指標に過ぎない」と口を酸っぱくして言うのにもかかわらず、「Indicator line値」が一人歩きするでしょう(笑)。
 (c)頬のふくらみ
※cheek lineは人が直感的に相手の表情をとらえる場所ですが、単に骨格の前方発育度を代表するわけではなく、各種の表情筋の協調活動に依存して同一個体でも大きく変わります。さらに術者がトリックモーションを指示すれば5mmくらいは容易に膨らみの度合いが変わるので、顔写真だけの情報を鵜呑みすることは控えなくてはなりません。
頬骨は、セファログラム上ではOrbitaleの参照点を提供し、上顎骨と強固に縫合しています。ですから頬骨にレストを設置して上顎骨あるいは中顔面を前方に成長させようとする方法は、解剖学的知見からも、大いに修正されてしかるべきです。

 (d)Lip sealとTongue postureの観察と臨床判断
※筋肉の動態と普段の相対位置は骨格や歯列の健全な発育に欠かすことが出来ません。矯正歯科が専門に医療になった1900年以前から、このことは広く知られていましたが、オーソトロピクス臨床では、あらためてその大切さが強調され、かつBiobloc Stage3(ときには4)という装置を用いた具体的なアプローチが提唱されています。

(3) The Biobloc appliance:その1
Biobloc Stage1と2、Purley wireの併用
※上顎用のステージ1、下顎用のステージ1は、使用目的も設計もまったく異なります。ステージ2は、上顎複合体のorthopedicな側方拡大変化を維持し、インディケーターラインの値を減じた上顎切歯を保つ、舌房を可及的に犯さない装置。また、前方や側方への下顎の突き出し癖を口腔前庭部に設定したワイヤーによって改善を目指すのがPurleywire。

(4) The Biobloc appliance:その2

Biobloc Stage 3と4
※前の項目(3)は、オーラルポスチャー是正へ向けた、いわば準備的段階でした。ここから、本格的な対応へすすみます。装置は臨床アプローチのすべてではありませんが、都合、子どもたちに対して、正しいオーラルポスチャーを習熟する手助けとして装置は極めて有効です。前方と後方のソフトロックのデザインが共通するステージ3と4のおもな違いは、後ろの維持歯にかける特殊クラスプの遠心に、レスト設けられているか否か、です。上顎第二乳臼歯がぐらつく、または脱落した症例では、装置が不安定となってロックの効果が十分には発揮できません。対策として、前歯に維持部を増設します。これがステージ4という装置。オーラルポスチャー是正を目的とする装置には、VTやHoffmanといったさまざまなモディフィケーションがあります。

(5) Changing“posture”=オーソトロピクス臨床の核心部
 (a)Oral posture and Muscle tone
 (b)Thumb sucking
 (c) 頬筋の肥大
 (d) Oral myotherapy

※口腔諸筋群に対する理学療法です。1910年から20年代には、アルフレッド・ポールロジャースという臨床医が、このことに注目をして、装置の考案もさることながら、今日の我々から見てもすぐれた臨床成績を収めています。Myo-functional therapyとほぼ同義ですが、posture の重要性へ注目するJohn Mew先生は、このんでOral myotherapyといいます。また、耳鼻科系疾患である呼吸障害へのアプローチを含むので、他科医療との連携は、多くの日本人小児患者への対応では必須となりましょう。言語療法と絡んで発達してきた分野ですので、正しい英語の構音を目的とした訓練も混在します。日本人の、それもとくに口腔顔面の発育にあわせた療法へ改良するに超したことはありません。ともあれ、動的ならびに静的な、筋肉を含めた軟組織へのアプローチは、オーソトロピクス核心をなします。この領域の計測そのものは容易ではなく、経時要素も錯綜します。“dormantな状態(遺伝特性が休眠状態に放置されているが、抑制を排除すれば時間的には回復のまだ間に合うもの)”への評価は一層困難です。複雑系科学でしばしば提唱される「初期条件に敏感」は、muscle toneについても当てはまるので、どの程度の復元が期待できるかは、謙虚に臨床を重ね、科学的に厳しく評価を下していく以外にそれを知る方法はないかも知れません。分野を問わず散見される「一発確信屋さん」がしばしば陥る過ちでしょう(笑)。ですから臨床者は常に謙虚でなくてはなりません。ぐるりと一巡して、ここに、Prognosis,Diagnosis,Treatment planning,そして装置の扱いや筋肉への理学療法、他科との協力体制、そして治療全般を通じた客観的なmonitoringの大切さに、我々は振り戻るわけです。
・・・みのるほどこうべをたれる稲穂かな

以上、講演会の概要でした。

Part2から、具体内容を、John Mew 先生の臨床の背景となった欧州の史的変遷と臨床活動の原動力に迫って、日本人専門医の目から楽しく検討していきましょう!!

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