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第42回Orthotropics研究会例会報告

2021年6月16日

すっかり春めいて参りました。
お茶の水中央大学駿河台記念館にて3月15日、例会が開催されました。担当は、竹本美保会員。

●より実践的な内容に刷新、特別講師には、東京エアトラベル・ホテル専門学校の増田浩美先生をお招きして、「接客の心」を学びました。質疑が絶えず、診療所の従事者にまつわる職業意識や、近年学校教育の現場等でも社会問題に発展してきた「過保護」「クレーマー」等といった我が国全体の価値観の急激な変化、ひいては TDLマジックまで話が及び、基本に立ち戻り、心をこめることとマナーの大切さを教えて頂きました。

●ベーシックセミナーは、横須賀良次会員。
オーラルポスチャーの 是正準備としての上顎骨の側方拡大には、Biobloc Stage Iを用い ます。新生骨の発育を促しつつ行う正中口蓋縫合の離開は、上顎複 合体全体の各縫合部をゆるめる効果もありますので、開口癖が「染 みついた」子どもたちの中顔面の発育を、穏やかな舌の挙上ポスチ ャーと相伴って、回復する基盤をととのえます。「アゴを広げて歯を 並べる」思考とは異なる点に注意を要するところ。最近は、小臼歯や大臼歯の根が、皮質骨を突き破って、歯肉退縮を 来す事がCT画像で確認されて、とりわけ概ね9歳以降の上顎骨の側方への拡大には、年齢、筋肉の動態、もともとの骨の厚みといった、個体差への慎重な配慮が求められる様になりました。
すべて、 clinical judgmentたる所以。このような質問や意見が気軽に交わせ るのもアットホームな研究会ならでは・・・・です。

●定番となりました、Biobloc Stage IIIの調整実習。今回の担当は 新藤勝之会員。理論はあくまで理論。実際の診療は、成長期にある、個性豊かな子どもたちです。キーワードは「おおむねの方向性」。
「方向性」とは、とりもなおさず「オーラルポスチャーの是正」。
骨格や歯 列といった、自力では回復困難な領域に第一段階で我々はアプロー チします。その結果を安定させたり、それを契機に正常な顔面の発育を促すのが「機能&ポスチャー」。機能の代表格は「呼吸、嚥下、 咀嚼」。ポスチャーの代表格は「舌が口蓋に収まって、口唇は軽く閉 じ、上下の歯牙は極めて近接」、要するに「お口をぽかんとしない!」 に集約されます。Biobloc Stage IIIは、後者への対応となりましょう。

●パネルディスカッション:担当は北總征男会員、嶋浩人会員、里 見優会員。
テーマは ずばりMuscle tone!!
硬組織と違って軟組織の動態を 計測して統合した形で表現する方法は、現在截然とした評価法はあ りません。でも、臨床経験や日頃の観察を通じて、感覚的に察知す ることは困難ではありません。丁度、気落ちしたときの表情と人生 最高潮の表情が、同じ人でも表情や声音(こわね)から包み隠さず 現れてくるようなものでしょう。パネラーの皆さんは、矯正専門医 としてオーソトロピクスの臨床に造詣の深い方ばかりです。北總会員からはまず、どのように「Muscle tone(筋緊張)」をとら えて実際の現場に反映させれば良いか、症例を交えて解説していた だきました。そのなかで、もともと「Muscle tone(筋緊張)」がCaucasianより低位安定型の日本人について、そのなかでしっかりしている患者さんと、大変弱い傾向をもつ患者さんの治療を交えて解説してもらいました。
嶋会員は、比較的High muscle toneの2級患者さんの発表がありま した。下顎枝の旺盛な発育が発揮されて、顔貌の改善とともに、かみ合わせも安定、かつビューティフル。成長期を逃して、通常のエッジワイズ法による治療を行っていたとしたら、このような遺伝特性を引き出すことは出来なかったと思われます。 里見会員からは、咀嚼訓練、発語トレーニングを併用した治験例が紹介されました。手根骨の骨化度が、顔の成長スパートと終了のよき指標になることが知られていますが、紹介症例では身長とは相関性が低いまま、すでに拇指種子骨の骨化が早期から確認されました。とくに女児では、5歳から6歳に発現する「成長スパート」の機を逃さずに、矯正歯科医や小児歯科医が適切に介入することの大切さが強調されていまし た。「たべる」、「はなす」、「はなでいきをする」・・・といった当たり前の機能がなかなか育まれないなかで、その基本機能に着目し、諸種の装置の特性や諸種の理学療法を併用して治療を進める必要性が強調されていました。

●三好光平会員からは、先欠を伴うII級の二卵性双生児の症例が報告されました。歯牙の先天欠如は自然のバリエーションとして、珍しいことではありませんが、歯と歯の隙間を矯正歯科治療に活用できる場面も少なくありません。やはり、Prognosis、それも長期の展望を以て、現時点でわかること、わからないことをわけて判断し、個々の患者さんの個別与件をひろく鑑みて適切に対応してゆく大切さが、レビューアーの中野錦吾先生から補足されていました。
そして、懇親会はお茶の水「山葵」。和みのひとときです。