よくわかるOrthotropics|矯正歯科の診断・治療法をお探しの方は日本フェイシャルオーソトロピクス研究会まで

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「よくわかるOrthotropics」シリーズ 第4回目

2021年6月16日

今日は「オーソトロピクス(自然成長誘導法)の特色」です。
矯正歯科の歴史的な変遷に照らすと、一目瞭然です。

●1930年代、「上顎の位置は安定しているから変えるべきではない」という、キチキチの考えに多くの矯正歯科医は染まっていました(上顎複合体を構成する骨の形状特性から見てもこれは誤認です)。
●やがて、上の奥歯にバンドという装置をかけて、それを足がかりに首や頭のうしろへネットやストラップ状の装置で引っ張ると、上あごが引かれた方向へ動くことがわかって、徐々に使われるようになりました(上顎後方牽引装置)。しかし出っ歯の患者さんが多い欧州米国では、どうしても「上あご(上の前歯)を下げる」、といった発想に片よりがちとなり、もともと下がっている下あごにあわせようと一生懸命でした。しかし、多くの場合、装置の力系の反作用で下あごもさらに後ろ、かつ下へ落下してしまいました。
●その反省として、下あごも前に、動かすことが出来るのでは? という発想が生まれました。いわゆる機能的矯正装置の登場です。残念ながら、解剖学的な基礎知識不足、下顎の持つ役割のちがい、あるいは個々の患者さんのMuscle tone の違い、口を開けざるを得ない耳鼻科系の病気の関与等々に由来して、効果は不十分、もしくは反作用でさらに下あごも上あごもあらぬ方向へと成長する事例が多々起こりました。もちろん、オーラルポスチャーの重要性に対する認識は、有能な臨床医の一部を除けば、まだそれほど浸透していなかった時代です。
●マルチブラケット(いわゆる針金)全盛期の到来です。面倒は飛ばして、患者さんの主訴である「歯」を見る時代に入りました。そんな時代のうねりに在っても、正常な顔の成長を妨げない、優れた治療法もあるにはあったのですが、「顔を台無しにしてしまう危険の大きい治療」が簡便さゆえに主流となりました。端的には、「歯」の並びを「顔」より優先し、思わしくない結果を来せば手術で骨を動かす・・・そんな時代です。

わかりやすく治療開始年齢10歳(左列)と8歳(右列)の、ともにアングル分類Ⅱ級1類における治療結果の差を示してみました。10歳の女の子の方はマルチブラケットを主体とした治療(オーラルポスチャーの改善は認められず)、8歳の女の子はバイオブロックによる治療(良好なオーラルポスチャーの獲得)です。細心の注意を払っていても、オーラルポスチャーが改善しないと治療後に数年経てば、このような結果を生じることもあり得る、とお考え下さい。
なお、自然成長誘導法における生理的な変化を狙うことの出来る年齢は、一般には、5〜8歳であることを、強調しておきましょう。