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「よくわかるOrthotropics」シリーズ 第12回目

2021年6月16日

【上顎Biobloc StageⅠ】
さて、今日からは2回ほど、上顎用Biobloc StageⅠ装置の取り扱いをご説明しましょう。

まずは基本から。
「上アゴ」は、写真のとおり左右ひと組の骨によってつくられるのではなく、役割の異なる幾種類かが集まって構成されます。噛む力を伝える部分はしっかりとしていますが、それ以外は板状となって、軽いながらも引っ張り応力によく耐えます。

口のほかにも、鼻腔(びくう)、鼻咽腔、眼窩(がんか)をかたちづくり、軽くてしなやかな構造上のゆえに顎整形学的アプローチが可能となります。歯列だけに効果が及ぶわけではない、という事実は、それだけ包括的かつ慎重な対応が歯医者さんには要求されることを物語っています。

このような、表情を醸し出す顔の中央そのものへの対応‥‥それが上顎Biobloc StageⅠのターゲットです。その目的とするところは、次の段階の装置、Biobloc Stage Ⅲで行うオーラルポスチャー改善の準備を整えること。

臨床者が解剖構造を熟知していないと、「歯を並べるためにアゴを拡げる装置」くらいの勘違いをしてしまうかも知れません。『装置探し』からOrthotropics に興味を抱いた歯医者さんが陥りやすい、一番の問題でしょう。
「歯を並べる隙間の確保」‥‥既にここには因果の混同(非抜歯治療はあくまで結果として達成されることがあるに過ぎないこと)と、目的の取り違え(歯を並べる装置ではなく、顔の成長を引き出すのが狙い)があります。

また基本的な事実関係、たとえば上アゴと頬の骨との強固なくっつき具合(縫合)の存在を見落としていると、各縫合部をBiobloc StageⅠの効果で緩めたあとに時として行う上顎前方牽引処置に際して、頬(頬骨上顎縫合の近辺)に維持を求めて中顔面を前へ引っ張るような努力を患者さんに強いることも起き得ます。ちょうど、マンホールの上に立ってマンホールの蓋を引き上げるようなもの。

ということで、上顎複合体の骨の解剖を写真で見てみましょう。耳鼻科系の理解の一助として、副鼻腔の開口部を最後のスライドに示しておきました。

次回は、研究会でしばしば話題になる、上顎複合体の『側方拡大』の方法と量、関連する治療の流れについて、お話しいたしましょう。

※ 「オーラルポスチャー」を治療に掲げる臨床医の集まりがWebサイトに見受けられるようですが、本研究会とは関係ありません。