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「よくわかるOrthotropics」シリーズ 第14回目

2021年6月16日

今日のテーマ:「上アゴの可変性とCatch up growth」!!

【上顎複合体の柔らかさ】
ヒトの骨で、剛性密度がもっとも高いのは、側頭骨錐体部と下アゴでしょう。おなじ歯を並べる器であっても、上アゴ(たくさんの骨から構成されるので上顎複合体)は柔らかです。……ということは、普段の生活の中でオーラルポスチャーがちゃんと維持されているかどうか? 食べ物をよく噛むかどうか? 口を閉じて鼻で息をするかどうか? で形が変わりやすいわけでもあります。

ですから、個人個人の特性に留意して、矯正歯科装置を適切に選択し、適切に使えば、小学校の中学年前までは、形や成長方向をある程度、変更できる可能性があると言えましょう。

【反対咬合を例に……】
10歳女子。スライド1をご覧下さい。

子どもの歯(乳歯)の根が、かなり吸収しています。治療に利用できるのは下の奥の乳歯2本だけ。状況から判断して、上顎Biobloc StageⅠは使えません。
治療の方向性としては、バイオブロック1型や2型とは別の装置を活用して、
(1)上アゴの前への発育を促す
(2)伸び出てしまった下の前歯を骨にもどす(将来の魅力的な笑顔に、とっても貢献!)
の2点をはじめに実現させ、
そのあと、Biobloc Stage Ⅳ(この場合はバイオブロック 4型)をつかい、オーラルポスチャーの改善へ進むのが、もっとも自然なアプローチであると考えられました。

【どうなったでしょう?】
スライド2とスライド3をご覧下さい。

顎顔面口腔、かいつまんで言えば「歯並びと顔、それに飲み込み方やしゃべり方」は、のびやかに発育していきました。
上アゴの成長を、側貌セファログラム上で代表するのは Point A(A点)だけです。ここは前頭蓋から吊られる場所なので、上アゴの前後の位置変化は、T1とT2のトレースを、Ba-Na(頭蓋基底)at Naに重ねれば客観的に評価できます。
この子の場合、前頭蓋の前への成長はほぼ終了していますから、治療によって3.6 mm 前へ成長が発揮されたことになります。鼻尖部ではさらに旺盛な成長も確認されました。

たった1年3ヶ月でPoint Aが『3.6 mm』前へ……すさまじい変化。

この変化の背景には、三つの事柄が考えられます。
(1)Reverse H/G(リバースヘッドギアー=上顎骨前方牽引装置)の成果
(2)前歯の逆噛み改善から生じた「解放現象=Unlock」
(3)オーラルポスチャーの改善を基盤に「Catch up Growth」と呼ばれる、今まで眠っていた成長のポテンシャルが一気に発現する現象

実際は(2)と(3)は混和するので明別は不能。両者は物理学用語の「ポテンシャル」に集約する変化です。
生体の場合、このような事象について人類は適切な計測手段を持ってはいないので科学的検証は今後とも期待しかねますが、臨床の現場では、「じっくり腰を据えて、『場』を整え、からだの反応を待ち、観察とモニターリングを行い、多くの治験実績を積む」といった地道な手順を踏めば、ご自身のシックリとした心証に加えて、患者さんやその家族からのよろこびの声を以て、きっとおわかりいただけるでしょう。

※ 「オーソトロピクス」、「バイオブロック」、それにまつわる認定医制度を標榜するWebサイトが見受けられますが、本研究会とは関係ありません。