よくわかるOrthotropics|矯正歯科の診断・治療法をお探しの方は日本フェイシャルオーソトロピクス研究会まで

〒289-2516 千葉県旭市口645

0479-62-0225
  • 地図
  • メニュー

「よくわかるOrthotropics」シリーズ 第6回目

2021年6月16日

「患者さんの生活環境・幼少期からの履歴・遺伝要素等々を加味して、バランスのよい本来の状態へ誘導する方が」‥‥と前回述べました。はたしてほんとうなのかどうか? 10年以上におよぶ推移を観察した、バイオブロック治験例を今回はご覧いただきましょう。

●主訴「あごが小さく歯が生えだした時点から重なって心配」という、6歳の女の子。「本人に負担の少ない方法で取り組んでもらえたら‥‥」と、お母様の心情あふれる添え書きもありました。
お姉さんは反対咬合の治療中で、顔と歯列については明らかに異なる遺伝形質を受け継いでいるようです。

ここからは、専門的な書き方ですみませんが‥‥
●【概要】
筋肉系はDolicho type、気道の問題は少ないのですが、すでに開口癖が強く、口唇閉鎖時にオトガイ筋が過剰に緊張、嚥下のときには頬筋・口輪筋が強力に作動します。花粉症による季節的な鼻閉も有り。
多くの経験を積まれた専門医でいらっしゃるなら、容易な処置では済まされない症例であることはご十分に察せられるでしょう。

●【治療の見通し】
① 自然成長誘導法をおこなっても、仕上げ治療(マルチブラケットによる歯牙配列処置)のときは50%ぐらいの可能性で小臼歯抜歯が必要になる
② それを回避するには垂直方向の成長(あくまでも直感的には、形質遺伝として潜在的にはあると想われる)を、水平方向に変換するよりなかろう
③ そのためにはオーラルポスチャーの是正が不可欠である

●【治療の経過】
8歳に治療を開始。すぐにはじめても良かったのですが遅れた理由は忘れました(全くだめです……笑)。オーソトロピクス(自然成長誘導法)は、難易度からするとやや厳しい状況ですが間に合います。

① 上顎と下顎歯列にBiobloc StageⅠを5ヶ月使用、ただちにオーラルポスチャーの是正を目的とするBiobloc Stage Ⅲを装着、ひと月以内に一日に22時間以上の使用が可能なるほどがんばってくれました(ここが治療の最大のポイント!!)。
② 12歳の誕生日までこの装置を気長に使ってもらいましたが、昼間はご本人の自覚で口唇閉鎖と口蓋へ舌をおさめる状態(「オーラルポスチャー」)が維持できるまでに改善したので、途中から夜間のみの装着に変更。
④ 依然、歯はガタガタしているのでR. M. RickettsのUtility arch を中心に7ヶ月間マルチブラケットを用いて歯列も整えました(通常のメカニクスでは顔の成長バランスが一気に崩れるので、きわめて、要注意です!!)。
⑤ ワイヤー保定については、はじめの4年は上下前歯の舌側へ、あとは下顎のみ(4切歯へは現在も接着中)。

●【要約】 写真をよくよくご覧になると、従来の治療では達成できなかった顔貌の変化や「しっくり」とした歯列にお気づきになるでしょう、と同時に、ほんとうの「非抜歯治療」の厳しい現実も “感触” なさっていただければ幸いです。